罰ゲーム倶楽部 第2ゲーム だるまさんがころんだ


 

『だるま』

 

 コールが始まると共に、仁は一瞬で優衣の目の前まで距離を詰めた。隙をつかれた優衣は慌てて顔を防ぐ。

 

「さんが転んだ!!」

 

 急な声に驚き、優衣はその体勢のまま止まった。

 

 

 あれ……? 今の声って……。

 

 優衣が違和感を感じた次の瞬間、頬に柔らかい感触が当たる。

 

 え? どういうこと?

 

 優衣は混乱した頭を必死に整理する。

 

「だるま」コールが終わったから動くのをやめた。なのに仁は動いている。

 あれ? それじゃあ仁は失格じゃん。ていうか今あたしにキスしてない? 何してんのコイツ。

 だるまコールだって勝手に終わらせるし、無茶苦茶だ。

 

 

 

 ……勝手に……? 

 

 

 そうだ。後半は仁が勝手に叫んだだけだ。

 じゃあコール終わってないじゃん!! 騙された!!

 

「仁!!」

 

「ホッペいただき」

 

 仁はそのまま優衣を抜き去って走り出した。

 

「悪いな。罰ゲームは受けたくないんでね」

 

「ちょっと、待ちなさいよ!!」

 

「続きはまた今度な!」

 

 

 仁は振り返らずに叫ぶ。

 

『……がころんだ!!』

 

 本物のコールが終わり、全員がピタッと止まる。

 

「キス……された……」

 

 優衣は遠くにいる仁を睨んだまま止まっている。仁はすでに中庭の出口に手をかけていた。

 

「仁! 絶対に許さない!!」

 

『だるまさんが〜』

 

 優衣が仁を追いかけようとした瞬間、後ろから手を掴まれた。

 

「仁はやめとけ」

 

 優衣が振り返ると、目の前に和也の姿があった。

 

「離してよ! 追いつけなくなっちゃうじゃん!!」

 

「お前じゃ勝てねえよ」

 

優衣は動きを止めて和也を見つめる。

 

「は? 何で!?」

 

「お前はバカ正直すぎるからな。仁とやってもボロボロにされるのがオチだ」

 

 

『ころんだ!!』

 

 仁の姿はすでに見えなくなっていた。他の3人もすでに優衣の近くまでやってきている。ぶっちぎりで勝つことはすでに不可能だ。

 

 優衣は和也をきつく睨んだ。

 

「……あたしにケンカ売ってんの?」

 

「ああ。そのつもり」

 

そういって和也はニッと笑った。

 

 

「仁の代わりに相手してやるよ」

 

 


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