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秋。


11月3日(憧れのクリスタル)

 

「なあ、お前の生活って女っ気ないよな」

 

ある日の夜、僕は友達の笠原君にふと言われた言葉に深く傷ついた。

 

「そうかな?」

 

「そうだべ。お前、最近誰かと付き合ったりしてるの?」

 

「いや……」

 

「だろ? 見りゃ分かるよ。色気が足んねえもん」

 

なんだろう。なんでもかんでも分かったような口を利くこの男は……。

 

僕は酒を飲んでいくうちに、目の前のブサイクな男に対してどす黒い憎悪の念が湧き上がってくるのを感じていた。

 

「男っていうのはよ。少しぐらい強引じゃねえとモテないんだよ。分かるか? ラビハチ」

 

「いや、全然分からない」

 

「だろーな。だからお前はダメなんだよ」

 

笠原君は本当に偉そうだ。実際には偉くもなんともないくせに。

 

「そういう笠原君はさ、今誰かと付き合ってんの?」

 

「おお。俺今三股かけてんだよ。マジ体足んねえっつーの。分身の術覚えてーっつーの。ははははは」

 

「……」

 

ムカツク。女の敵だ。こういうヤツは誰かが鼻っ柱をへし折ってやらないといつまでも調子に乗ったままだ。

 

さあ、どうしよう。

 

僕の頭の中にあるスーパーコンピューターは一瞬にして答えを出した。

 

コイツを騙してやろう。とんでもないウソでプライドをズタズタにしてやろう。

 

「なあ、ラビハチ。一人ぐらいお前に回してやろうか?」

 

「……いや、いいや。俺彼女いるし」

 

「は? お前さっきいないって言ってたじゃねえか」

 

「いや、まあ事務所に口止めされてるんだけどね」

 

「事務所って……、まさか芸能人かよ!」

 

「……大声だすなよ」

 

「おい、教えろよ。誰と付き合ってるんだよ」

 

笠原君が食いついてきた。ここで天性の嘘つきである僕の実力の見せ所だ。

 

さあ、食らえ! 笠原。

 

「俺、今クリスタル・ケイと付き合ってんだ」

 

どうだ。この見事なチョイスは。僕のセンスが見え隠れする最高にオシャレなウソ。

さあ、ひれ伏せ。今すぐ俺に土下座しろ。

 

「お前すげえな!! ラビハチ。超メジャーアーティストじゃん」

 

「言いふらすなよ? バレると俺が怒られるんだから」

 

笠原君の驚いた顔は僕に充分すぎるほどの満足感を与えてくれた。ああ、今日もいいウソをついたなあ。

 

「で、クリスタル・ケイの本名は?」

 

「え?」

 

「いや、付き合ってんだろ? あの子の本名ぐらいわかるべ」

 

笠原君から思わぬ反撃がきた。予想外のパンチをテンプルに食らい、僕の頭の回転は完全に止まった。

 

「あ〜、本名……ね……」

 

クソ。動け、僕の中のスーパーコンピューター。

 

動けー!!

 

 

 

「あいつは本名もクリスタル・ケイだよ」

 

うご……かなかっ……た……。

 

「え? マジで? じゃあお前、普段はなんて呼んでるの?」

 

「クリスタル」

 

「ふ〜ん。下の名前で呼ばないんだ」

 

「うん。『クリスタル〜。ちょっとこっち来て〜』みたいな」

 

「すげえな。そしたらクリスタルは?」

 

「こっちに来る」

 

「すげえ〜〜」

 

クソっ! なんだこのバカな会話は!! 全然オシャレじゃない。オシャレさのかけらもない。

 

「お前らカラオケとか行くの?」

 

「うん。行くよ」

 

もう勘弁してくれ……。僕が悪かったから……。

 

「すげえな。生歌が聴けるんだ!」

 

「ああ……まあね……」

 

どうやってリクエストすんの?

 

『クリスタルー。ちょっとこれ歌ってー』って

 

そしたらクリスタルは?

 

歌ってくれる

 

すげえ〜〜

 

もう……ウソとかつかないから。

 

「向こうはお前のことなんて呼んでるんだよ?」

 

「ラビハチって……」

 

「そしたらお前は?」

 

「なんだい? クリスタル」

 

「すげええ〜」

 

11月17日(なんかあった)

 

部屋を整理していたらすっごい古いタイプのゲームボーイカラーを発見した。

 

古いな〜、と思いながら後ろを見ると「夜光虫」というソフトが刺さっていた。

 

懐かしいな。これがやりたくて買ったんだっけな……。(←無駄遣い)

 

早速スイッチを入れてみると、ピコーンって音が部屋に響いた。古い。画面も小っちゃい。目が悪くなる。

 

因みに夜光虫というのはゲームで小説が読めるという感じのソフトです。

だからかまいたちの夜とかおとぎりそうとか作ってる会社が作ってるんだと思われます。違ったらショックです。

 

さあ、ゲームスタートです。

 

画面の文字は非常に小さく、目に異常な程のストレスを与えます。

 

とりあえず、名前はラビハチに決定。

 

「うわ。なにその名前!」

 

隣で画面を覗き込む弟に気持ち悪がられました。

恥ずかしかったので、ラビハチという名前の5000倍は気持ち悪い照れ笑いを浮かべました。

 

気を取り直してゲームスタート。

 

私、ラビハチは貨物船「ダイアナ」の艦長である。

 

「おおた」

 

突然、貨物船の艦長になりあがった自分。もちろんテンションも一瞬のうちに最高潮です。

 

本日は出港の日。彼女の優花が見送りに来てくれた

 

そしてラビハチの彼女が登場。となりで弟が「よかったね」と言ってきました。どういう意味でしょうか?

 

ここで選択肢が登場です。

1 優花、来てくれたのか!

2 見送りなんていいといっておいたのに……

3 ゆ、優花

4 優花を無視した

 

このゲームはこういった選択肢を選ぶ事によってストーリーが変わるんですけど、

正直な話、ここの選択肢はいらないと思います。少なくとも4個もいりません。

 

とりあえず2番にしました。見送りなんていいと言っておいたのに……。といったら彼女はどんな言い訳をするのか気になったからです。

 

「見送りはいいと言っておいただろう?」

 

早速主人公のセリフ。おお。いいセリフだ。ワインが似合いそうだ。

 

「ごめんなさい。どうしてもラビハチさんの顔が見たくて」

「……そうか……」

 

「そうか」とか言っちゃった!!

 

僕がこの立場だったら真剣にイヤです。「見送りはいらない」と言ったらいらない。空気を読めるようにしてください。

 

なのに「そうか……」とか納得してしまう変なキャラにされてしまった僕。

 

そんな理由で納得するなら最初から来てもらうべきです。

 

優花の顔は心なしか元気がないように見えた。

これから一ヶ月も離れ離れになるのかと思うと胸が痛む。

僕は優花にこう言った。

1 泣かないで。優花。

2 おみやげは指輪にしよう。

 

「泣かないで。優花」はなかなか気持ちの悪いセリフですね。

 

なのでここは普通に2番を選びます。いい男を気取らせてください。

 

「おみやげは指輪にしよう。それもクレオパトラもびっくりのでっかいヤツ」

私がそういうと、優花は少女のような笑みを浮かべた。

「ふふ、ラビハチさんの給料で買えるかしら?」

よかった。元気がでたみたいだ。

タラップをはずし、出港の合図をだすと大きな汽笛が鳴り響いた。

遠くざかる優花が必死に叫ぶ。

「ラビハチさ〜ん!」

「優花〜。行って来るよ〜〜」

 

ようやく出港です。めんどくせえ。書くのめんどくせえ。(次回に続きます。久々の二日日記です)

 


11月18日(なんかあった。の続き)

 

昨日の日記の続きです。読んでいない人はそちらから読んでください。

 

船は出港し、私は自室で日記をつける事にした。

さて、日記のむすびは何にしよう。

1 この船が無事に目的地へつけますように

2 この船が無事に日本に戻って来れますように

 

なんだか物語を進める上で、ものすごく重要な選択を迫られているような気がします。

 

ここは1番にしておきました。とりあえず目的地に着くことが最優先。目の前の目標をこなしていく事が第一です。

 

しかし……。

 

「この船が無事に目的地につけますように。と」

あっ!!!!

ふとした瞬間にインクがたれ、不気味に広がっていく。

それはこれからの航海で起こる不吉な予感を感じさせた。

 

でたよ……。

 

恐ろしげなバックミュージック付きで幕を開けた今回の旅。あきらかに人が死ぬ事が決定しました。

 

選択ミスでしょうか? いや、そんなことはないはずです。

 

僕は昔「かまいたちの夜」で殺人事件が起こったとき、無実の人を犯人扱いし、地下室にいつまでも閉じ込め続けた男ですからね。

 

選択問題には自信がありますよ。ええ。

 

「いや、大丈夫だ。何も問題はないさ」

私は日記をゆっくりと閉じ、

1 気分を変えるために見回りに出ることにした

2 ベッドに入って眠る事にした

 

1番を選びます。

というかここは一番を選ぶべきでしょう。眠ってどうするって感じですよ。

 

さて、どこから見回ろう?

1 甲板

2 機関室

 

う〜ん、これはどっちだろう? まあ、中から見回って外は最後に回す事にしましょうか。

 

というわけで2番です。機関室から見回りします。

私は梯子(はしご)を下り、

薄暗い機関室へと足を踏み入れた。

辺りは闇に包まれ、まったく何も見えない。

手持ちの懐中電灯を取り出し、スイッチを入れる。

薄暗い闇に光がさした。

そのまま辺りをざっくりと点検する。

よし、今日も異常なし。

ピッ……チョン。

「……?」

 

異常があったみたいです。いきなり怖いです。

 

水のしたたり落ちる音が確かに聞こえた。

私は音のしたほうに懐中電灯をあててみる。

すると……。

機関室の隅っこにたたんであるビニールシートがピクッと動いた。

私がそのシートを勢いよくめくると……。

中では小柄な女性がうずくまって震えていた。

「き、君は……?」

女性は私に飛びつき、すがるように懇願してきた。

「オネガイシマス。ミノガシテクダサイ」

 

????????

 

突如現れた謎の女の子。一体、彼女は誰なのか? 目的はなんなのか?

 

次回に続く(次回が最終回です)

 


11月19日(なんかあった。完結編)

 

三日続いた日記も今日でラストです。

さあ、くだらないシリーズの幕を降ろしたいと思います。

 

その女性は宝石のついた髪飾りをしていて、肌の色は褐色。真っ黒な瞳とつややかな髪の毛がオリエンタルな魅力を感じさせた。

「コノフネガ『インド』ニツクマデデイインデス。ミノガシテクダサイ」

その言葉を聞いた瞬間、私は確信した。

……密航者……!!

なんと密航者でした。しかもインド人。インド人です。

 

カタカナばっかり喋って読みづらい事この上ナシです。

 

「き、君はなんてことをしてくれたんだ」

密航者を発見した船は、直ちに出発地に戻って犯罪者を引き渡さなければいけない。

存在を知っておきながら黙認してしまうと、私も犯罪者の仲間入りだ。

「ワタシ、トテモコマッテマス。ワルイヒトイッパイキテ、ワタシ、サラワレマシタ。カゾクミンナ、ワタシヲシンパイシテマッテイマス。

オネガイシマス。インドマデデイインデス」

「インドまでって言われても……」

1 ダメだ。君を連れて日本に帰る

2 分かった。これは二人だけの秘密だ

 

悩みますね。でもやっぱり犯罪者にはなりたくないので、僕は1番を選択します。

 

「ダメだ。密航は犯罪だ。君を連れて日本に戻る」

「ソンナ。オネガイシマス。モドッタラワタシハコロサレマス」

「すまない。ルールなんだ」

私がそういうと、少女は懐から布の小袋を取り出した。

「ワタシヲオクッテクレタラ、コレヲスベテサシアゲマス」

小袋の中にはたくさんの宝石が入っている。

「そんな物を出されても……。!!!!」

私は少女の首にかかっている大きな宝石を見て驚いた。

これは、まさか……。

「……ピジョン・ブラッド(鳩の血)」

私がそう呟くと、彼女の顔色が変わった。

あれは間違いなくピジョン・ブラッドだ。

優花にあげる結婚指輪を探すために、私は様々な宝石を調べていた。

その中で最も魅力的だったのが、このピジョン・ブラッドという最高級のルビーだった。

世界に数個しかないという希少種。私は少女に手を差し出した。

1 そ、その宝石をもっとよく見せてくれないか?

2 その宝石をくれるなら乗せて行ってあげてもいいぞ?

 

やばい選択肢だな。

2番なんか完全に悪役です。ロクでもない人生は歩みたくないので、僕は1番を選びます。

 

「そ、その宝石をもっとよく見せてくれないか?」

彼女はさっとその宝石を隠した。

「ダ、ダメデス。コレハリョウシンカラモラッタダイジナモノデ、コレダケハワタセマセン」

「頼むよ。見るだけでいいんだ。ほんのちょっとだけだから」

私は半ば強引に、彼女の胸から宝石を奪い取った。

「……間違いない……。本物だ」

「モ、モウイイデショ? カエシテクダサイ」

「いただきまーす」

私はその宝石を飲み込んだ。

 

?????????????????

 

「ナ、ナンテコトヲスルンデスカ!! カエシテクダサイ! カエシテクダサイ!!」

「ふははははは! これでもう手術でもしないかぎり私の腹から出てくる事はない!

この宝石は私のものだ!! はははははは」

 

やばい。主人公が完全にいかれた。このストーリーは完全にやばい。

 

「うっ!!!」

私のノドを通るにはピジョン・ブラッドは大きすぎたらしい。私は呼吸器を完全にふさがれ、

息が出来なくなった。

「あ……、ああ……」

「クルシイデスカ?」

意識が朦朧とする中、私は何度も頷く。

「ダッタラトリダシテアゲマス」

え?

次の瞬間、少女は懐からナイフを取り出し、私のノドを切り裂いた。

 

??????????????????

 

突然豹変した幼い少女。これは芥川賞を受賞できるほど素晴らしいストーリーだとしかいう言葉がない。

 

おびただしい血が目の前を埋め尽くしていく。

「ヨテイヘンコウデス。ワタシハコノフネヲノットルコトニシマス。サイショノギセイシャハアナタデス」

悪魔のような少女の笑みを目に焼きつけ私はゆっくりと目を閉じた。

「こ、こんなところで……」

ー終ー

 

というわけであっさり死にました。ゲームって本当に素晴らしいですね。

ブックオフに売り去りたい気持ちで胸がいっぱいです。

 

おしまい。

 


11月20日(すごいとかカワイイとか)

 

今日はポエムを書いてみようと思います。

 

理由は単純で、

この日記を見た女の子達に「カワイイ」と言われたいからです。

 

じゃあ早速書きます。

 

『ときめきアメリカーナ』

 

ジェニファー。

君がくれたたくさんのお菓子には

全部着色料が入っていたね。

あれを食べてから、なんだか体がすごくだるいんだ。

 

いや、別に君が悪いとかそういうことを言っているワケじゃない。

 

不思議な感覚なんだ。君のくれたお菓子の事を思い出すだけで、胸が苦しくなるんだよ。

 

なんていえばいいんだろう? ドキドキするっていうのが一番近いのかな?

 

そう、ドキドキするんだ。

ドキドキで思い出したけど、

君が初めて僕の家に上がった時、普通に土足だったよね。

あれもすごくドキドキしたよ。

 

君は僕の家の壁で、タバコの火を消したよね。君といるとドキドキが止まらないよ。

 

でも君にも優しいところはある。君はいつも優しく微笑んで、たくさんのお菓子を僕に差し出すんだ。

たくさんの着色料が入ったお菓子をね。

ああ、目がチカチカしてきた。何を混ぜたらそんな芸術的な色が出来上がるんだい?

 

ジェニファー。

君の国のお菓子をアリの巣に入れたら、アリが全滅していたよ。

 

 


11月27日(ゆとり教育の犠牲者)

 

 

前回の謎のポエムから1週間たってしまいましたね。

僕は元気です。家族もみんな元気です。

 


11月28日(誕生日)

 

最近ネットが繋がらなかったので、更新ができませんでした。すみません。いいわけです。

 

そういえば今日は誕生日でした。

 

友達に祝ってもらってとても楽しかったです。

 

というわけで僕は102歳になりました。今後ともよろしくオネガイシマス。

 

 


11月30日(ホームページャーの悩み)

 

最近、小学校時代の同窓会をやって、仲が良かった友達が全員イラン人だと知った。

 

子供の頃はみんな幼い顔立ちをしていたから気づけなかったけど、

大人になった今、改めて顔を見てみるとみんなしっかりとしたイラン人の顔つきになっている。

 

 

家に帰ると僕は慌てて卒業アルバムを開いた。

 

友達と仲良く写っている写真を一枚一枚眺める。

 

「こいつもイラン人。こいつも。こいつも。クソ! こいつもだ!!」

 

まさか……。

 

僕はクラスメートのページを開いて、当時好きだった女の子の写真を見た。

 

ムスリマ……。彼女の名前の欄にはそうかかれていた。

 

「そんな……。ひどいよ。ひどすぎるよ……!」

 

僕の目には大粒の涙が浮かんでいた。

 

僕の初恋の女の子は、国外に強制退去させられたのだった。

 

……4000HITありがとう。

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