第1ゲーム じゃんけんぽん!!!
芹沢優衣(セリサワ ユイ)が窓の外を見ると、爽やかな朝の景色が広がっていた。6月の穏やかな風が桜高等学校に立ち並ぶ木々を揺らし、青々と茂った葉っぱが揺れる。夏の始まりを告げる太陽の熱も、コンクリートを白一色に染め上げる光も、すべてが愛しい。夏は優衣の一番好きな季節だ。
優衣が学校の外を歩いている子供に手を振ってみると、こっち気づいて一生懸命振り返してきた。朝の日差しの中で爽やかなコミュニケーション。う〜ん。本当に気持ちのいい日だ。今日はこのまま眠っちゃおうかな……。
優衣は大きなあくびをし、机の上にだらんと突っ伏した。首筋に太陽の熱を感じて心地いい。こんな日が毎日続けばいいのに。と、優衣は思った。
だんだんと落ちてくる瞼。その重力に逆らう事をやめ、優衣は静かに目を閉じる。
蝉の泣き声と、自分の呼吸のリズムは優衣を心地よい世界へと誘った。
「え〜。マジかよ!!」
突然教室内に大きな声が響き渡る。優衣がビックリして顔を上げると、目の前に人だかりができていた。
目の前は吉村裕子といういつもは目立たない大人しめな女の子が座っている席だ。普段は仲のいい数人の女の子が集まっているだけのその席に、今日はクラスメイトだけではなく他所のクラスからも人が集まっていて、ちょっとしたお祭りみたいな騒ぎになっている。
「ユッコよかったね〜」
友人からの祝福に裕子は心から幸せというような笑顔で頷いている。目にはうっすらと涙が。よほど嬉しい事があったのだろう。
さすがに気になった優衣は、何があったのかを裕子に直接聞いてみる。
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