罰ゲーム倶楽部 第1ゲームじゃんけんぽん
昼休み、優衣の席の周りで友達数人が机をくっつけて昼食を摂っている。優衣は朝から昼までの授業を眠ったまま、昼休みを迎えていた。
友人の本田麻紀が優衣をヒジでこづいて起こす。優衣はビクッと震えて起き上がった。
「あ、寝ちゃってた?」
優衣が時計に目をやると、時刻は12時10分をさしていた。
「爆睡してたよ。ほら、ヨダレでてる」
麻紀は笑いながら優衣の顔を指差す。優衣は夏服の袖でヨダレを拭いた。
「……野生のトラに襲われる夢を見た」
「それは素晴らしいね。数学の授業よりもずっといい経験だ」
麻紀は片手でおでこにかかる前髪を左右に分け、偉そうに頷いている。なんだか先生を気取っているみたいだ。
麻紀は優衣のカバンから弁当を取り出し、優衣の机に置いた。
「ほら、食べれる?」
「ん〜?」
半分寝ぼけながら弁当を食べ始める優衣の元に、担任の牧原先生がやってきた。ちょっと背が低めの先生は、同じく身長低めの自分と同じ境遇にいるようで、なんだか好感が持てる。
「芹沢、今日の放課後大丈夫か?」
優衣は弁当の卵焼きを口に含んだまま首を傾げる。牧原先生は深く息を吐いた。
「今日は生徒会役員の初顔合わせだよ」
「あ〜。なるほろ」
優衣は大きく頷く。自分が生徒会役員だった事など、完全に忘れていた。
入学してすぐに生徒会役員に立候補した優衣は、持ち前の明るさと、気の強さをフルに発揮し、学年中を演説して回って、1学年のほとんどの票を獲得して当選した。
優衣が生徒会役員に立候補した理由は2つ。生徒会はほとんど仕事がなくて楽だということ。
これは幼馴染の先輩から聞いたから間違いない。
そしてもう一つは、生徒会に入っていると、内申点が良くなるということだった。
そして実際に生徒会に入ってみると、先輩の言うとおり仕事などほとんどなかった。
優衣は当選した当初は、テンションが上がって、自分が生徒会を変えてやろうなんて大きな志を持っていたが、あまりに活動する気配がないため、今になるまで役員の事など完全に忘れていた。当初の目的もすでに薄れていて、限りなく透明に近い。情けない話だ。
「というわけで今日の放課後、よろしくな」
「はーい」
牧原先生のお願いに、一応元気良く返事を返しておく。先生は少し不安そうな顔をしたまま、教室を出て行った。
「相変わらず適当だね」
先生が去ると、麻紀がパンをかじりながら優衣に話しかけてきた。
「そうかな?」
優衣は弁当箱のハンバーグに箸を突き刺し、口に放り込んだ。
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