罰ゲーム倶楽部 第1ゲームじゃんけんぽん


 

「まあ、その適当さも優衣のいい所だと思うけどね。生徒会は適当な仕事ばっかりだってよく聞くし、優衣にはちょうどいいんじゃない?」

 一見バカにしたようなセリフだが、麻紀は決して嫌味を言っているわけではないという事を優衣は知っている。麻紀は思った事を悪意なく口に出すようなカラッとした性格なのだ。

 まあ実際、麻紀の言うとおり、生徒会は適当だと思う。6月に入ってやっと初顔合わせが始まるなんて、正直遅い。こんなだらしない生徒会が、まともな仕事をするのだろうか? 

 生徒会は新たな交流の場、優衣はそう思っていたが、こんな腐った生徒会でできる友人なんてろくなものじゃないだろう。どうもめんどくさくなってきた。さぼってしまおうか……。

 そんな事を考えていると、遠くから優衣の事を呼ぶ声が聞こえてきた。

「優衣、いる?」

 優衣が教室の入り口を見ると、生徒会役員の佐藤彩が立っていた。優衣は勢い良く席から立ち上がる。眠気は完全に吹き飛んだ。

「彩ちゃん! 久しぶり」

 優衣は急いで彩の元へ駆け寄った。彩は優衣を生徒会に誘った例の先輩で、優衣とは小さい頃からとても仲がいい。接してきた距離が近いため、優衣にとって彩は気兼ねなく話せる唯一の先輩だった。ただ、優衣の周りの友達からすると、大人びた彩は憧れの象徴で、話しかけるのに緊張してしまうらしい。

 麻紀は彩に向かって軽く挨拶をし、頭を下げた。彩と向き合って唯一平常心のままでいられるのは麻紀ぐらいだ。

 「優衣、今日は生徒会の役員の顔合わせの日だって覚えてる?」

 彩の問いに優衣は後ろ頭をかきながら答えた。

「もちろん」

 覚えてるよと頷く優衣を見て、彩は小さく笑い声を漏らした。

「放課後、迎えに来るからね」

 どうやら彩は優衣がサボろうか悩んでいた事をお見通しだったみたいだった。さすが長い付き合いだけあると優衣は深く感心した。


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