罰ゲーム倶楽部 第3ゲーム ケイドロとお姫様
「でね、分かったんだ。あたしが優衣になるのは無理だって。というより、なろうとすること事態がムダなんだ」
裕子は自分で納得するように頷く。
「あたしはあたしなりに努力するんだ。じゃないと、誰かと同じ人生を歩く事になる。そしたらもう自分の人生じゃないよね」
「う、うん」
優衣は裕子の言葉がまだひっかかっていた。
あたしは……芋虫を素手で掴むようなイメージなの?
「で、優衣の好きな人って誰よ?」
「え?」
急に自分に話が振られ、優衣は動揺した。
「大物とか言ってたよね。あたしの知ってる人?」
「いや、どうだろ……」
優衣は頬をかいた。実は好きな人ができたというのはまだ裕子のほかに誰にも話していない。
「ほらほら、早く言ってよ。それとも、やっぱり修ちゃんの事が好きとか?」
「いや、違うよ!」
「じゃあ誰よ?」
裕子が意地の悪そうな顔を見せる。どうやら聞かなければ収まりがつかないようだ。
優衣は自分の体に盗聴器がないかを探り出した。
「ほらほら、早く早く」
「うん……。ウチの学校の3年の……」
話にのめりこむ裕子の手元のアイスキャンディーが溶けて地面に水滴を落とす。
青々と茂った草木が風でリズムを刻むように揺れる。
真っ青に晴れた空に、鳥が高く飛んだ。
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