罰ゲーム倶楽部 第3ゲーム ケイドロとお姫様
「言ってくれるね。人のカレシ捕まえて」
「だって本当だもん」
そう言って優衣はニコッと笑う。
その顔を見て裕子はため息をついた。そのまま背中の木柱にもたれかかる。
「あんたと話してると、あたしだけ怒ってるのがバカらしくなるよ」
「まだ疑ってる? あたしと修二の事……」
「いや……」
裕子は手元の溶けかかったアイスを口にくわえた。
「最初から分かってたよ。付き合ってないって」
アイスをかじり、口の中で転がしながら、裕子は遠くを見た。そんな裕子の顔を優衣はじっとみつめる。
「優衣はすぐに誰とでも仲良くなるし、いつも話題の中心だしさ。優衣と麻紀のコンビはどっちが可愛いかで男達が盛り上がってるのも見たことあるし」
「ええ!? そうなの?」
「あたし、優衣みたいになりたかったんだ。自分を変えたかった。社交的な人間に。誰とでも付き合える人間に」
次々と思い出したように喋るこの喋り方は頭のいい裕子らしくなかった。話の内容が整理されてないその口調は、優衣にというよりも自分に語りかけているように思える。
「でも、どれだけ世界を広げようとしても、結局優衣の名前が付きまとった。嫌になっちゃうよ。なにしろカレシまで口にするんだからね」
そう言って裕子は再びため息をつく。
「ぶん殴っちゃえ『あたしだけを見ろ!』って」
「うん。今度ね」
二人の笑い声が庭に響く。
「本当にね、いろいろ試したんだよ。優衣みたいに牛乳を鬼のように飲んだりとか、突然奇声を発したりとか、芋虫を素手で掴んだりとかね」
「え? あたしってそんな人間?」
「うん、そんな人間」
裕子はあっさりと頷く。優衣は自分の挙動が不安になった。
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