罰ゲーム倶楽部 第2ゲーム だるまさんがころんだ
優衣は目を細めて麻紀を見つめた。
「……うさんくさい」
麻紀がムキになって机ごと前に詰め寄ってくる。
「本当だって!! 吉岡さんと神谷さんなんか、知らないほうがおかしいぐらいなんだから」
優衣はもう一度手元の紙を眺めてみる。う〜ん。やっぱりうさんくさい。
「こら。何を話してるんだ」
突然の声に優衣は慌てて振り返る。気がつくと百瀬先生がいつの間にか自分の机の目の前に来ていた。さすがロボット。気配を全然感じなかった。
「その変な紙を渡しなさい」
「あ、はい」
百瀬先生が差し出した手に、優衣はあっさりと紙を乗せた。「罰ゲーム倶楽部」と書かれた面をオモテにして。
「え……?」
百瀬先生の顔が青ざめていくのが分かる。優衣はにっこりと笑った。
「どうぞ持ってっちゃってください」
「え、いや……、これは」
しどろもどろになりながら、百瀬先生は優衣の机に紙を戻した。
「……静かにしてるように」
「は〜い」
百瀬先生の後姿を見ながら、優衣は小さく笑い声を漏らした。麻紀が呆れ顔で優衣の顔を見る。
「えげつないよ……。優衣」
「そーかな?」
それにしても退屈だ。教室の蒸し暑い空気に触れていると、どんどん頭がゆだってくるような気がする。こんな状況で勉強をし続けたらむしろバカになっていくんじゃないだろうか?
窓際の席から校庭を覗くと、数十人の男子生徒達がサッカーをしている。
「いいなあ。私も運動したい」
その時、優衣の呟きに答えるように、教室のスピーカーからコツンという音が響いた。
『いや〜、緊張するね』
「……え?」
放送室から聞こえてくるこの声はまさか……。
『マイクチェックマイクチェック。テステステス。テステステステステス』
優衣は一ヶ月前を思い返した。昼休みに突然流れたあの放送を。この声はあの時とまったく同じだ。
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