罰ゲーム倶楽部 第2ゲーム だるまさんがころんだ
「どうする? 逃げるなら今の内だよ?」
「うう……」
洋介の顔は今にも泣き出しそうなぐらい歪んでいる。百合を見ると、あまりの恐怖にガタガタと震えていた。
「逃げるなら今のうちだよ〜〜?」
優衣はもう一度念を押してみる。というか、逃げてくれないと優衣はお手上げ状態になる。
洋介の情けない所を百合に見せて、幻滅させるというのが優衣の作戦だった。
さあ、逃げろ!! 百合ちゃんを置いて逃げ出せ!!
優衣の心の叫びに反応するように洋介は顔を上げて叫んだ。
「お、俺は、逃げない!! 悪者はやっつけてやる!!」
追い詰められた洋介は優衣に向かってタックルをかました。優衣はそれを慌てて受け止める。
洋介は優衣に掴まれたまま叫んだ。
「百合、逃げろ!!」
「ええ!? だめだよ!! 洋介君も来て!!」
「逃げてくれ。お前だけは絶対に守る!!」
「イヤだよ!! あたしも残る!!」
百合はそう叫んでがっしりと洋介にしがみついた。目の前で展開される痛々しいぐらい青臭いドラマをみて、優衣はため息をついた。
我ながらアホらしい作戦だった。
掴まれている腕に力を感じる。小学生になったばかりの洋介の力は当然弱々しい。しかし、小さいながらに精一杯の力を込めているのは優衣にも充分伝わっていた。
洋介君は普通にいい子だ。
この二人を別れさせるなんて、そんな酷い事私にはできないよ。
「二人とも、ごめん」
優衣がそう呟くと、洋介が顔を上げた。
「さっきのは冗談。こんな可愛らしいお姉ちゃんが殺し屋に見える?」
冗談だと分かって、洋介の顔が緩む。
「百合ちゃんをしっかり守ったね。かっこよかったよ。洋介君」
優衣のセリフを聞いた洋介は、安心したのかそのまま泣き出してしまった。
罰ゲーム失敗か……。
でも、まあしょうがないや。こんなくだらない事を人に頼む男の方が悪いんだ。
そんな事を考えていると、後ろから和也の声が聞こえた。
「さあ、みんな寄っといで。お菓子屋さんだよ〜〜〜〜!!」
そう、このまま終わるはずがなかったのだ。
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