罰ゲーム倶楽部 第3ゲーム  ケイドロとお姫様


 仁は小さく咳払いをして、声のトーンをいつもの低い声に戻した。

 

「さて、次のゲームについて話そうか」

 

 仁は圭を指差した。

 

「依頼の内容を皆に伝えてくれ」

 

「……はい」

 

 圭は立ち上がり、ゆっくりと皆の顔を見回した。

 

「僕は今から5日後に、ある屋敷からあるものを盗みます。みなさんにはそれを手伝ってもらいたいのですが」

 

「泥棒!?」

 

 優衣が勢いよく立ち上がった。仁が唇に指を当てて、その後机をトントンと叩く。

 

 どうやら黙って座っておけと言いたいらしい。優衣は椅子に座りなおした。

 

「……手伝ってもらえますか?」

 

「いいじゃんいいじゃん。面白そうじゃん」

 

 和也が目を輝かせている。周りのメンバーもどこかワクワクしているような表情だ。

 

 

「で、何を盗むの?」

 

 彩がテーブルに片肘をつきながら訪ねる。皆は一斉に彩を見た。

 

「100万円も使ってまで盗みたいものって、何?」

 

 彩が真っ直ぐに圭を見つめる。同時にメンバーの視線も圭に集中した。

 

 圭は大きく深呼吸して、彩の目を見つめ返した。

 

 

 

 

 

「僕が盗みたいものは、……恋人です」

 

 

 

 

 

「ええ!!?」

 

 優衣が思わず叫んで立ち上がる。

 

「乗った!!」

 

「俺も!! 面白え」

 

「じゃあ、俺も〜」

 

 優衣に続いてメンバーが次々と立ち上がる。

 

 優衣はとんでもない事が始まる予感を感じていた。

 

 女の子を盗む? それって人攫いって事? マジで言ってんの?

 

「はは。夏は燃え上がる恋の季節だな」

 

 そう言って、仁は優衣を見ながらニヤっと笑った。

 


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