罰ゲーム倶楽部 第3ゲーム ケイドロとお姫様
「優衣も大変だね」
後ろから彩の声が聞こえて、優衣はゆっくりと振り返る。
「うん」
「修二のこと好きなの?」
「全然」
「あはははははは! そりゃ本当に災難だ」
屈託なく笑う彩の顔を見て、優衣は体の力が抜けていくのを感じた。
「裕子……。私の事がムカつくんだって。」
「大丈夫、優衣はいい子だよ」
そう言って彩は自分の胸をトントンと叩いた。
「私が保証する」
「うん……」
まあ、どうでもいいか。と優衣は頭をかいた。
自分のとりえはバカみたいに明るい事。それがなくなったら本当になんの魅力もない。
友達に濡れ衣を着せられてケンカになるなんて事は、世の中に数多く存在する不幸に比べれば、ほんの小さなものに過ぎない。
そう思って気持ちを切り替えよう。裕子にはいずれ弁解すればいい。
「ねえ優衣、これから何か予定ある?」
「え? 別にないけど……」
「焼き鳥食べに行かない?」
「行く!!」
「いいね。その立ち直りの早さ」
彩は優衣のカバンを拾い上げ、優衣に手渡した。
「じゃ、行こうか」
「彩ちゃんのおごり?」
「もちろん。全国大会反則負け祝い」
「……ヘコむ事言わないでよ」
「あはは」
街頭の下、優衣と彩は並んで歩き出す。
吹き抜ける風は暖かく、これからますます暑くなっていくだろう。
「修ちゃんに釣り合うように私は努力していくの」
ふと、裕子の言葉を思い出す。
優衣は目の前を歩く彩に問いかけてみた。
「ねえ、彩ちゃん。人のために変わっていくっていうのは幸せなのかなあ?」
「……なんだか優衣らしくない質問だね」
彩は笑いながら空を仰いだ。
「そうだな〜。変わりたいと思える程好きな人に出会えることが、幸せなんじゃない?」
「……好きな人ね」
風で冷やされていく優衣の頭の中で一人の男がチラチラと顔を出し始めていた。
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