罰ゲーム倶楽部 第3ゲーム ケイドロとお姫様
代わりに冗談めいた質問を一つ投げかけてみる。
「お前ってさ、なんなの? ボランティア団体の会長かなんか?」
「なんで?」
「ほぼ初対面の人間をデートに誘うって時点でおかしいし、いや、初対面でなくても俺みたいな無愛想でつまらない人間を誘うのは、明らかに普通じゃない」
「そうかな」
「少なくとも、俺が女だったら絶対にゴメンだね」
「そういえば圭君って、女の子になっても似合いそうな顔してるよね」
「うるさいな」
小夜子は少し笑って、遠くを見たまま呟いた。
「私はね、後で後悔しない生き方を選んでるの」
「……?」
圭は小さく首を傾げる。小夜子は更に続けた。
「例えば、同じクラスなのに今まで一度も話した事のなかった人が芸能人になったりしたら後悔するでしょ?」
「……俺は芸能人なんかになれねえぞ」
「はは。例えよ。例え」
「くだらねえ」と呟く圭の腕に、小夜子はギュッと力をこめた。
「……もしかしたら、運命の人かもしれないしね」
「は?」
圭と小夜子は足を止めて見つめあう。
「運命、信じる?」
小夜子の顔は真剣だった。圭はきょとんとしたまま口を開く。
「いや、全然」
小夜子はくすっと笑い、圭の腕を引っ張った。
「だと思った。そういう話、興味無さそうだもんね」
「運命とかバカらしいし、考えたくもねえ」
「うん。だから誘ったんだよ」
「……意味わかんねえ」
「さ、行こうよ。デートデート」
からかわれてるような気もしたが、圭の中に不快感は不思議となかった。
「運命の人」
使い古されたその言葉が、やけに圭の心に残った。
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