罰ゲーム倶楽部 第3ゲーム  ケイドロとお姫様


「いつもので」

 

 小夜子は勝手にあいてる席に座って遠くから注文をする。

 

 小夜子の注文するものが分かっていた圭は、すでに冷蔵庫から生クリームを取り出していた。

 

「いつもガラガラなのに、この店よく潰れないね」

 

 客は小夜子一人。窓の外のもみじの木にはメジロがとまっていて穏やかな時間が流れている。

 

「まあ、店長が趣味でやってるようなもんだからな」

 

「あのステージは何?」

 

 小夜子は店の端にあるステージとピアノを指差す。

 

「ああ、金曜の夜はジャズバンドが演奏するんだよ」

 

「素敵!! 圭君はもう見たの?」

 

「まあ、仕事中だからあんまり見れないけどね。オレンジのライトに照らされて、豪華だった」

 

「いいなあ。私も見たい。一緒に見ようよ」

 

「……俺はバイトなんだってば」

 

 そう言って圭は小夜子の机にチョコレートパフェを置いた。

 

 店内はBGMもなくほぼ無音。そんな店の中で思いついたまま雑談を繰り返すのが二人の日課となっていた。

 圭は仕事をしながら、小夜子は文庫本を片手に。

付き合いは短くても、お互いの好みは大体分かる位、二人はたくさんの時間を共有した。


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