罰ゲーム倶楽部 第3ゲーム  ケイドロとお姫様


「圭君ってさ。いつもひとりだよね?」

 

「うん」

 

「寂しいとか思うことないの?」

 

「今のところはないかな」

 

「すごいね」

 

 そう言って小夜子はパフェのさくらんぼを口に放り込んだ。

 

「私ね、圭君みたいになりたいんだ」

 

「は?」

 

「一人でも平気で生きていけるようなたくましさっていうの? 私はそういうの持ってないから」

 

「いや、俺のはそんな大袈裟なものじゃないよ。普通にそれが楽だから一人でいるわけで……」

 

「たとえばさ……。広い世界で一人ぼっちになったら、私は生きていけると思う?」

 

「……?」

 

 小夜子は時々意味の汲み取りづらい会話を持ってくる。いつもは明るい小夜子が脈絡なく暗い話を持ってくるとき、必ず表情は沈んでいた。

 

 圭はそういう話が始まった時、小夜子の深いところまで読み取ろうとはしなかった。だからこの日も軽い気持ちで声をかける。

 

「じゃあさ、サヨが一人になったら俺が助けに行ってやるよ」

 

「え?」

 

「俺が一緒にいてやる。呼んでくれればすぐに駆けつけるから」

 

 小夜子は少し驚いた表情で圭を見つめる。

 

「そしたら一人じゃないだろ?」

 

「それって何? 告白?」

 

 小夜子がクスッと笑う。

 

「イヤイヤ、そんなつもりないよ。ただ……」

 

「感謝してるから」という言葉が照れくさくて、どうしても口からでなかった。

 

 一人が好きだと言い張っていた自分。そんな自分に毎日声をかけてくれた小夜子 。

 

 圭の中で今一番重要なのは小夜子と過ごすこの時間だった。

 

「じゃあさ、本当に付き合ってみる?」

 

 俯く圭に小夜子が声をかける。圭は目を丸くして小夜子を見た。

 

「何言ってんの?」

 

「『1年間だけのカップル』してみない?」

 

「1年?」

 

「そう1年。その時がきたら絶対に別れるカップル契約」 

 

 まただ。すぐに変な事を言い出す。

 

 圭は小さく首を傾げつつ、小夜子の顔を眺めてみる。

 

 小夜子は急かすようにとんとんと机を叩いた。

 

「ほらほら、こんな可愛い子が言ってくれてるんだから、契約しないと損だよ」

 

「……俺さ、あんまりサヨの喜ぶ事してあげられないと思うよ? 根がつまらない人間だからな」

 

 圭の照れた表情を見た小夜子は笑って手を差し出した。

 

「よろしく!!」

 

 圭は服でごしごしと手を拭き、小夜子の手を握る。

 

 握ったその手から、暖かさが伝わってきた。


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