罰ゲーム倶楽部 第1ゲームじゃんけんぽん


 生徒会役員は全員椅子に座ったまま俯いている。優衣は全員の顔を眺めるが、目の焦点が合っていないような変な顔だ。正直あんまりいい印象は持てない。彩はまだ来ていないようだった。

「あの〜、どうしたんですか?」

 優衣の問いかけを聞き、7・3分けのメガネをかけたいかにもパッとしない男が顔を上げる。優衣は見覚えのあるその顔を必死に思い出す。

 

 うーん。そうだ。たしか立候補の時に見た生徒会長だ。

 

 生徒会長は机の中心に置いてある一枚の紙を指差した。優衣はその紙を手にとってみる。

「え〜っと、『親愛なる生徒会様へ 罰ゲーム倶楽部より』」

 優衣は「また!?」と声を張りあげた。続けて紙を音読する。

 

「お手紙をさし上げたのは、今年の部費の申請のためです。罰ゲーム倶楽部は30万円の予算を要求します。ご検討ください」

 優衣は顔を上げた。生徒会の面々は相変わらずへこんだまま微動だにしない。

「え? なんですか? これ……。30万円って」

 優衣の問いに生徒会長が答える。

「そこに書いてあるとおり、罰ゲーム倶楽部からの手紙だよ」

「無茶苦茶じゃないですか!」

 部長は再び俯いている。

「部費の予算は全部で約100万円だ。一つの部に30万も渡したらとんでもないことになる」

 

 会長から少し離れたテーブルにはたくさんの先生が座っていて、同じく生気を失った顔をしている。

「まさか……、払ったりしないですよね?」

 教室に沈黙が流れる。牧原先生が一言、消え入りそうな声を出した。

「しかたないんだよ」

「何言ってるんですか!! 従う必要ないですよ」

「キミは罰ゲーム倶楽部の恐ろしさを知らないからそんな事が言えるんだ」

 会長の一言を聞いて、優衣は紙を握りつぶした。

「私が注意してきます。そのクラブの部室を教えてください」


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