罰ゲーム倶楽部 第2ゲーム だるまさんがころんだ
〜心臓破り〜
人で溢れかえる体育館。お喋りしている集団の間をするすると抜けていく。
人の波を読まないと、二人にたちまち追いつかれる。
視野を狭め、自分が走る道だけに集中していく。
周りはほとんど見えない。今考えるのは、溢れる人をどうやってかわすかと、どこのコースを走るか。それだけだ。
総合体育館のドアから外に飛び出すと、爽やかな風が体をすり抜けていった。
よし、これでだいぶ離したはずだ。
優衣は後ろを振り返ると、彩と麻紀は真後ろにピッタリとくっついてきていた。
「うそぉ!?」
後ろで麻紀がにっこりと笑った。
「あたしが誰だか忘れたの? 優衣」
そうだった。麻紀は中学の時、長距離走の選抜選手だった。高校では結局部活に入らなかったけど、麻紀には陸上部の部長から未だに熱心な誘いが来ている。
まずい、引き離せない!! この距離じゃバスも使えない。どうしよう。どうしよう。
麻紀の隣で彩が楽しそうに笑っている。
「優衣、昔からあたしにかけっこで勝った事ないでしょ。リベンジのチャンスだよ」
麻紀も笑いながら頷く。
「そんなんで本当にあたしを置き去りにできるの?」
「うるさいな! これからだよ」
優衣は歯を食いしばってスピードを上げた。
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