罰ゲーム倶楽部 第2ゲーム だるまさんがころんだ
桜高校まで残り10キロ。
大通りに出て、道が3方向に分かれる。
優衣は一番遠回りな道を選んだ。なるべく目的地を悟られないようにしなければいけない。それに、この道を進めば心臓破りの坂が待っている。
上り坂なら瞬発力と根性の勝負。根性だけなら二人には負けない。
「麻紀ちゃんって足速いんだね」
「彩さんこそ」
二人は余裕たっぷりで、会話をしながら走っている。
「余裕でいられるのも今のうちだよ」
優衣は独り言のように前を見ながら呟いた。絶対にぶっちぎってやる。
長い長い住宅街を抜けると、目の前にすさまじい傾斜が広がった。
この坂はおよそ400メートルもあると、運動部のクラスメートから聞いたことがある。
この傾斜は登りきるまで先が見えない。したがって一番最初に登りきれば、少しの間後ろの二人の目から逃れる事ができる。
距離を離してその隙に隠れる。チャンスはここしかない。
優衣は坂に入る前に、走りながら息を整える。
「なるほどね。心臓破りの坂か……。面白いね」
彩は小さくつぶやき、隣の麻紀に話しかけた。
「そういえば麻紀ちゃん。罰ゲーム倶楽部って知ってるよね」
え?
優衣は耳を疑った。麻紀は彩を見つめながら頷く。
「は、はい。もちろん」
優衣が後ろを振り返ると、彩がニッコリと笑っていた。
「私の秘密、一つだけ教えてあげる。この坂で私についてこれたらね」
うそ。彩ちゃんってまさか……。
目の前に浮かんだ疑問で混乱する優衣の前に彩が全速力で飛び出した。
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