罰ゲーム倶楽部 第2ゲーム だるまさんがころんだ
優衣はスピードを上げた。目の前の彩に並び、一気に追い抜く。
優衣はそのまま空に向かって大声で叫んだ。
「ねえ、二人とも! 私、罰ゲーム倶楽部に入っちゃった!!」
「ええ!!」
後ろから麻紀の声が聞こえる。そして彩の笑い声も。つられて優衣も笑顔になっていた。
「隠してた秘密って、それ!?」
「うん。バカみたいでしょ?」
「みたいじゃないよ。バカなの。優衣は」
麻紀が「私も入りたいのに……」と小さく呟く。意外な反応だ。顔は見えないけど、スネた子供みたいな口調だった。
「麻紀も入れば? 死ぬほどつまらないけどね」
「あははは、言えてる」
彩が相槌を打つ。優衣は彩の方を振り返った。
「彩ちゃんって……」
「ひょっとして罰ゲーム倶楽部の部員なんですか?」
麻紀が一緒になって聞いた。彩はあっさりと頷く。
「元ね。2年も前の話」
「彩ちゃん、二年前そんなことしてたの!?」
優衣はすかさずツッコんだ。あんなクラブに入っている彩を想像してみるが、どうしてもイメージが沸かない。
「まあ、若気の至りってやつ? 今は善良な一市民です」
優衣は大きくため息をついた。本当にバカらしい隠し事だった。でも、こうやって汗だくになりながら走ってるほうが自分らしい気もする。
「そういえば彩ちゃん、坂を登りきる前に答えちゃったじゃん!」
「そういえばそうね」
「ていうか、本当に何をやってるんですかね? 私達は」
三人は笑いながら坂を登り続ける。
昼を過ぎ、太陽が一番高い位置に上った。
優衣は残り少なくなった傾斜を一歩一歩踏みしめる。もう頂上はすぐそこだ。
「優衣、足速くなったね」
「でしょ? 彩ちゃん、今日は私が勝つよ?」
「そう簡単にはゆずらないよ」
空の青さが地面に深い陰を落とす。たれた汗がコンクリートに染み込んで、深いグレーに染まる。
坂を越えると、鮮やかな色が散りばめられた森林が目の前に広がった。
桜高校まであと3キロ。
蝉の鳴き声が夏の始まりを告げる。う〜ん。今日もいい天気。
罰ゲーム日和だ。
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