罰ゲーム倶楽部 第2ゲーム だるまさんがころんだ


 和也は百合の目の前に座り込み、例のクッキーを食べる。

 

「あーうめえうめえ。やっぱり最高だな!! ゴキブリは!!」

 

「イヤ!!」

 

「やっぱり夏はゴキブリだよな! マジ腹いっぱい食いてえよ」

 

「やめてよ!! どっかいって!!」

 

 百合は和也から必死に目を逸らしている。和也は百合の「どこかへ行け!!」という叫びを聞いてもまったく動く気配を見せない。

 

 嬉しそうな顔でクッキーを食べる和也を、優衣はただ呆然と眺めていた。

 

 いくら罰ゲームとは言え、お金がかかってるとは言え、

 あどけなさの塊のような少年少女にここまでするか?

 

「百合……」

 

 洋介が気まずそうな表情で百合の肩を掴む。百合は慌ててその手を振り払った。

 

「あたしに触らないで!!」

 

「な、なんでだよ!! 俺と結婚するって言ったじゃん」

 

「洋介君、味覚おかしいよ。ゴキブリをチョコレートクッキーだとか言って!!」

 

「そ、それは……」

 

「あたし達、もう会わないほうがいいと思う……」

 

 洋介は黙り込み、二人の間に沈黙が流れる。

 

 一瞬にして倦怠期の夫婦のような空気。

 

 優衣は言ってあげたかった。

 

「チョコレートクッキーで合ってるよ」と。

 

 

 でも、罰ゲームに失敗した自分には当然そんな権利はない。

 

 

 気まずい二人の沈黙を破ったのはもちろん和也だ。

 

「それー!!」

 

 和也は掛け声と共にクッキーを百合の足元に落とした。百合の顔が一気に青ざめる。

 

「きゃあああああああ!!」

 

 百合は砂場から全速力で逃げ出した。そのまま公園の出口に向かう。

 

「待てよ! 百合!!」

 

 洋介が慌てて追いかける。

 

「来ないでよ! 気持ち悪い!!」

 

「誤解なんだって!! あれは絶対にクッキーだよ!!」

 

「嫌い!! 男の子なんてみんな大っ嫌い!!」

 

「男の子は、みんなゴキブリがだ〜〜いすき〜〜!!」

 

 走り去る二人に向かって、和也は大声で叫んだ。

 


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