罰ゲーム倶楽部 第3ゲーム ケイドロとお姫様
〜燃え上がる恋の季節〜
桜高校の花壇の草木は青々と生い茂り、夏本番を迎える。
本日の気温は32度。うだるような暑さの中でクーラーもつけない教室は、生徒どころか先生までだれている。
「優衣も啓祐も、この暑い中よく眠れるね……」
後ろでは麻紀がだるそうに机に伏せている。その隣では啓祐が寝息を立てていた。
あれ? あたし、寝てたのか。なんか変な夢を見ていたような……。
どんな夢かは思い出せないが、さっきの夢はなんだか現実に近いようなそんな不思議な感覚があった。
机から起き上がった優衣は教室を見回した。
入学当初から比べると、クラスメイトのイメージがだいぶ変わっている。
特にこの時期は浮かれる人が多いのか、自分の中に変化を求める人が増える傾向があった。
ちらほらと変わっていくクラスメイト達。
学校が生徒の統率を取るための校則を作る。しかし、その校則に逆らう事で逆に統率が取れているのは皮肉といえば皮肉。こうなるといっそ「普通の生徒」の方が目立つんじゃないかと優衣は思う。
そんな変わっていくクラスメイト達の中でも、特に気になるのは、吉村裕子だった。
1ヶ月前と比べると、裕子はだいぶキレイになっている。
クマのヌイグルミのようだった体型が見事に痩せている、しゅっと引き締まった顔にはうっすらと化粧をしていて、よく見るとマツパーもあててある。
うっすらと赤みがかった茶髪は黒染めが落ちてきたのかと思ったが、生え際まできっちりと赤みがかっていたのでなんだか不思議だった。
裕子はまだ修二と付き合っているのだろうか? 優衣は頬杖をつきながらぼんやりとそんな事を考えていた。
裕子が修二とつりあう女の子になるために頑張っているのだとしたら、なんだかいたたまれない気持ちになる。だって、修二は罰ゲームで付き合っているのだから……。
ふいに裕子と目が合った。笑顔を向けると向こうは気まずそうに顔を背ける。
……何で?
「芹沢、成績表いらないのか〜?」
遠くから急に牧原先生の声が聞こえた。優衣は慌てて立ち上がる。
「いります。いります」
「休みボケにはまだ早いぞ」
牧原先生はそう言って優衣の頭に成績表を乗せた。
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